master visaのキャッチコピー
銀行は国債消化の片棒をかつがされたことで物凄い損を抱えることになった。
含み損を処理するのに何年もかかりましたね。
安定的に国債が消化される仕組みを作ったことで、大蔵省は自民党と癒着していったわけです。
これが「政治の五五年体制」に対して「経済の五五年体制」と言われるもので、省として銀行の首根っこを押さえ続けることになりました。
*五五年体制-一九五五年に発足した日本の政治の大きなシステム。
自民党と社会党の二大政党で政治を運営してゆこうという体制。
九四年に崩壊する。
銀行経営の全ても著の上げ下ろしに至るまで、大蔵省と一緒に相談ずくで進めていくことになった。
経営の根幹を大蔵省が振っていることで、銀行内の人事システムにも大きな影響を与えます。
MOF担や企画部といった東大閥が占めている部門の者が営業現場などで頑張っている者より出世していくことも多い。
銀行員のモラル崩壊この大蔵支配は、現象面では金融機関による度はずれた接待を生みました。
当時、大蔵省に行くと、もう三時ぐらいから黒塗りの車がゾロゾロと敷地内に止まってました。
キャリアの接待用に、みんな黒塗りの車が来てるわけです。
ノン・キャリはタクシーか何かでした。
気配りの神様みたいな人がいて、役人の接待にはその人に応じた黒塗りの車をきちっと用意していた。
大蔵接待では、ノーパン・シャブシャブが一躍有名になったけど、当時の感覚では最低の接待じゃないかという気がします。
銀行の検査部門の役人がバブルで接待まみれになったと言われたが、それはひょっとしたらいちばん安い接待だったかも知れませんね。
もつと偉い官僚は、それとは比べものにならない物凄い豪勢な接待を受けてました。
須田一方、接待する側の銀行員の道徳観も崩壊していったのではないですか。
だってMOF担などの超エリートが、昼間から大蔵官僚と一緒にフグを食い酒を飲み、ゴルフをやってたわけでしょう。
もちろん、MOF担はある種の使命感、業務としてそれをやっていた時代もあるでしょうが、バブル期は段違いに派手になり自分たちも一緒に楽しむようになったと思います。
銀行の一番のエリートがそういうことを始めれば影響が末端の営業店にも及ぶことは明らかで、モラルは総崩れになった。
不動産売買の仲介料を銀行員が密かに貰うのも常識だったといいます。
銀行員が顧客から現金をキックバックで貰ったり、女をあてがわれたりといった不祥事が横行したことは事実ですね。
江上さんが支店にいた時期とバブル期、この二つの時期に銀行員の意識がなぜこうも変わるんでしょうか。
私はバブルの時期に、幸いというべきか営業の経験がないんです。
だから私自身、もし営業店でバブルに巡り合わせたらバブル融資をやっていたかもしれない。
ただ、芝支店時代に教えられたことでこういうことがありました。
得意先が上場するとき、社長さんから「支店長や課長、江上さんにも未公開株を譲渡してあげる」と言われたんです。
値上がりは確実で、みんなやっているからということだった。
早速、支店長に報告すると、「銀行員にはいろんな誘惑があるが、絶対に貰ってはいけない」と切々と諭してくれて、ぐっと心に響くものがありました。
しかし、バブル期には日本中が財テク一色になりますね。
自分が融資したカネで、お客さんが株や土地で大儲けしていくわけでしょう。
「ありがとう。
何千万儲かった」などと目の前で言われたら「自分も」と思うんですね。
しかも「この株は絶対上がるから」とインサイダー情報も貰ったりする。
銀行員が財テクに走る典型的なケースは、自宅の不動産を使う方法です。
当時、住宅ローンの社内融資には担保が付いていなかった。
つまり謄本が汚れていないから、その謄本で別の金融機関から金を借りて株を買うのが流行したんです。
もっとも、九一年のバブル崩壊でそれをやった人たちの財産は吹っ飛んでしまった。
もっとひどいケースでは、支店長や副支店長が自分で自分に貸出申請書を書いて融資を受け、インサイダー情報を貰った株に投資し、一週間ぐらいで何百万か儲けて返済するということをやっていた。
とにかくバブル期には、銀行員の中にお客さんと一緒になって株投機、不動産投機をやる人が現われるようになってしまいました。
バブルの崩壊江上さんはバブル期を本部で過ごし、引き続いてバブル崩壊を本部の人事部で迎えていますね。
人事部に行ってバブル崩壊をどのように体験するかというと、それは行員不祥事の処理となってあらわれたわけです。
前述した支店幹部が自身に貸出をしていたようなケースは、短期間で返済してるけども記録は残っているわけです。
他にもリベートを貰ったり、インサイダー情報で儲けたりといった不祥事が続出していた。
だから後から追いかけて調査し、処分したりしました。
バブル崩壊で、結果的に不祥事が発覚したわけですね。
そうです。
特にバブル崩壊後に増えていったのが大卒者の不祥事ですね。
銀行の人事部といえばトップエリートの集団ですが、配属の経緯はどういうことですか。
人事部に行ったのが九〇年四月です。
人事部全体はかなり大きな組織ですが、配属されたのはその心臓部、人事グループです。
二十人ぐらいのスタッフで、人事異動や行員の昇格などを全部決めるわけです。
言ってみれば、同僚の人生を左右する神様になったようなところもある部署で、欠点が何もないような人たちが配属される。
この人事グループは上から下までほとんどが東大出身者で、私のような私大出身者は非常に珍しかったと思います。
しかも最年少部員でした。
自分で手を挙げて行くわけではないから、これは運としか言いようがありません。
ただ当時、支店時代の上司が人事部にいたことと、人事部員が後任者を選ぶようなところがあったので、たまたま指名されたんだと思います。
須田一勧と言えば必ず指摘されるのが、いわゆる「たすき掛け人事」ですが。
人事部に行ってまずびっくりしたのは、合併から二十年近く経つのにまだ第一と勧銀がはっきりと分かれていたことです。
行員の全てに実は背番号が付いていて、この人は第一、あの人は勧銀という具合に色分けされている。
これは一体何なんだと、大きなショックを受けました。
女性にしても、五百人採用すると、はじめにわざわざ半分に分けて第一系、勧銀系の店に二百五十人ずつ配属するんです。
退職に対する補充という当然の考え方をしていなかったため、人員不足店や過剰店などの不合理が続いていました。
私自身は第一勧銀に入ったにもかかわらず、入行当時は第一系で管理され、その後は勧銀系に変わっていることを人事部に行ってから知りました。
人事部へは二人配属になったんですが、もう一人は第一系だったわけです。
人事部の歓迎会も別々で、私は勧銀系の酒席に呼ばれ、そこで第一の人の悪口を聞かされる。
私が「あなた方はその人と酒でも飲んだことあるんですか」と聞くと「ない」と。
その人のことを、そもそも知らないんです。
だったら、第一勧銀だとゴチャゴチャ考える必要なんてないじゃないです乃かと言ったことを覚えています。
九一年に合併二十周年を迎え、合併後に入行した人がほとんどになったのに実態は全く融合していなかった。
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